激動の時代の心理学 「人間万事塞翁が馬」に学ぶ
清水寺恒例の「一年の字」に、昨年は「変」が選ばれました。文字通り「激変の年」の始まりで、今年も厳しい不況と社会的混乱に直面することになりそうです。
「変化には変化で対応する」のが生活の知恵。過去の経験則が通用しにくい時代ですから、時には流れに身を任せ、ひたすら柔軟になりきるのも賢明な対処法かも知れません。

中国の古い話に「人間万事塞翁が馬」というのがあります。
「国境の砦(塞)の村に一人の老人(翁)がいた。ある日、飼っていた馬が逃げ出してしまったので、村人は気の毒に思って慰めたが、彼は『これが不幸とは限らない』といった。やがて逃げた馬は立派な駿馬を連れて戻ってきたが、祝う村人に彼は『これが幸運とは限らない』といった。それから、彼の息子が駿馬から振り落とされ足を折ってしまう。村人は憐れんだが、彼は『これが不幸とは限らない』と平然と答えた。その後、隣国との戦乱が起き、村の若者たちはほとんど戦死したが、彼の息子は足を負傷していたために兵役を免れ命が助かった」

この故事から「幸せと思えることが後に災いとなることがあり、またその逆もある」という教訓を得ることができます。
同時に「ある事実の意味は、それを受け入れる私たちの枠組み(フレーム)に係わっている」といえるのです。たとえば、二頭の馬を所有することは、息子が足を折るまでは良いことでした。骨折は日常生活を考えれば悪いことですが、徴兵や戦争を考えれば突然良いことに変わりました。

このことを心理学では「リフレーミング(再枠組み)」といいます。遭遇する物事の意味付け・受け止め方を変えることによって、意識や反応・行動を変えることができます。
リフレーミングはまた、創造性を引き出す重要な要素といわれています。古今の重要な研究・発明の多くが、ありきたりの事柄を有益で楽しい枠組みに置き換えることで生まれたといっても過言ではありません。

何事にも深刻に一喜一憂しないで「人生にはこのようなことがつきものだ」と理解していれば、不幸に陥ってもあまり悲しまないで済むでしょうし、同時に将来に対して希望を持つことができます。
物事は考え方一つで、どうにでも考えられるということ。そうであるなら、自分が生きやすいように考えることはとても大切なことではないでしょうか。 「不況は普況だと思い、いまや普通に戻っただけなんだ」とリフレーミングすることを提案したいと思います。




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