4つの心の地図 誰もが持っている「4つの心の地図」
−交流分析の視点からー
レジャーに帰省にと心が弾む夏本番。一方で「盆正月」と言われるように、日常生活に一区切り付け、自分を振り返りながら内省するにふさわしい季節でもあります。

さて、人生はよく「旅」にたとえられます。私たちが旅行に出掛ける時に地図を持って出掛けるように、あるいは大海に船出する時には海図や羅針盤を備えて行くように、人が生きて行く上で、こうした「心の地図」が必要なのは言うまでもありません。人生とは「物の見方」「考え方」「感情の持ち方」「行動の仕方」の集大成であると言えますが、そのベースになるのが、誰もが必ず持っているその人なりの心の地図。その地図の示す方向に従って人生を旅しているのです。ですから、支障なく目的地に到着出来るきちんとした地図を持つ必要があります。同時に、地図は現地ではないのですから、現地で臨機応変に対応する柔軟性も必要です。

この心の地図は交流分析の考え方では、大きく4つに分類することが出来ます。はじめに「健全な心の地図」。二つ目が「劣等感の心の地図」。三つ目が「独善・自己中心的な心の地図」。そして四つ目が「あきらめ・絶望的な心の地図」です。あなたはどの地図をお持ちですか? 今回の「暮らしの一言心理学」では「4つの心の地図」と題し、それぞれの心のパターンと対処法についてお話したいと思います。

人生を快適に生きる秘訣。それはクルマの運転技術と同じように、確かな「心の運転技術」を持つことです。もちろん、道に迷わぬ正確な地図を忘れないで・・・・。

4つの心の地図@ 健全な心の地図「自己肯定・他者肯定」
私たちがどのような心の地図を持ったかによって、どのように物事を考え、見方を持ち、どういう感情の持ち方をし、どんな行動の仕方をするか。それが決定付けられます。なぜなら、私たちの思考や感情、行動というのは、その人なりの心の地図がよりどころになっているからです。

そこで、いちばん理想的な「健全な心の地図」について考えてみましょう。一言で言うと「自分もOK(肯定)、他人もOK(肯定)」という心のパターン。「自尊感情」と言い換えても良いでしょう。たとえば赤ちゃんとしてこの世に生を受けたときに、ご両親から「ああ、生まれてきて良かった」と祝福されると、言葉は分からなくとも皮膚感覚で愛情を感じ取ります。そして「自分は愛されるに値する人間である」という自尊感情が育まれて行くのです。周囲の人間関係の中にあっても「自分は楽しくて、皆からも好かれている」という、とても安定した心の状態を常に保つことが出来ます。したがって、どのような場所でもとても居心地が良く、自分の居場所をすぐに探すことが出来るのです。

こういう方は「もっとリーダーシップを発揮したい」とか「親として子供によりよく接したい」というような、前向きな向上心の持ち主。健全な心の地図を持って「自分も他人も共に尊重しながら一緒にやって行く」。健康的な、素晴らしい心のパターンだと思います。

このパターンは、いろいろな経験・体験の中から努力して形成されるものです。そして、この形成のプロセスでは、人との素晴らしい出会いがカギだとも言えます。


4つの心の地図A 劣等感の心の地図「自己否定・他者肯定」
「劣等感の心の地図」すなわち「自分はNO(否定)、他人はOK(肯定)」という心のパターンを言います。昨今の「勝ち組」「負け組」といわれる格差社会の進行によって、劣等感を感じてしまう人が急速に増えているように感じられます。この「否定・肯定」という地図は、ご本人自身の思い込みなのです。 「人にふりかかる最大の不幸は自分自身を悪く考えるようになる事である」と言う教育心理実践家の教えがあります。まさに、その通りだと思います。

劣等感の心の地図を書いてしまった人は他人をうらやみ、また、行動の面では「何かがあったら逃避する」。逃げたくなってしまうのです。また感情の面では「オロオロとまごついたり、赤面したり、恥ずかしい気持ちが強く消極的」という特性があります。同時に、常に自分を軽視し、能力を過小評価する傾向を持っています。したがって「対人緊張」や「対人恐怖」の念が強く集団の中に入ると「どうにも居心地が悪い。自分の居場所がなかなか探せない」ということになってしまうのです。

こういう心の地図を修正するには、何よりも「発想の転換」が必要です。自分を軽く見るということは、自分を正しく見ているわけではありません。例えば、「神経質」だということは「相手に対して気配りが出来る」。「とても不安がある」のなら「慎重な性格である」というように、プラスの側面を見つめることによって自信を取り戻すのです。同時に、何か一つでも「他人に誇れるもの」を探すということ。どんな小さなことでも自信を持つ、そういう心の持ち方が必要です。

「幸せを指折り数える人は、今すぐ幸せになれる」という教えの通り、 自分の心のクセに気づき、思考修正とリラックス訓練が大切なのです。


4つの心の地図B 独善・自己中心的な心の地図「自己肯定・他者否定」
人は誰でも大切な「自己愛」を持っています。しかしながら、それが肥大化して行き過ぎた時、独善的で自己中心的な心の地図を描きます。「自分はOK(肯定)、他人はNO(否定)」という心のパターン。俗に「排他的ポジション」とも呼ばれています。まさにお山の大将の心理なのです。

こういう地図の持ち主は「自分自身は常に正しく、周りがすべて間違っている」という思い込みを持つようになります。たとえば、立派に成人しているにもかかわらず「こうなったのは親のせいだ!」「学校のせいだ!」「世の中のせいだ!」と他人を責めてしまう。あるいは職場においても、たとえば本人が気付かない仕事上のミスを指摘したりすると「余計なお節介はやめて欲しい!あなたは失敗したことがないんですか?」と居丈高に居直る。何しろ高慢で謙虚さがないので、当然周囲との摩擦が絶えないことになってしまいます。

ただ残念なことに、こういう方が自発的に心の地図の修正作業を行うことは少ないのです。そのため、ご本人より周りの人が困ってご相談にいらっしゃることが多いのです。何事も周りが悪くて、自分が常に正しいと信じて疑わないのだから当然ですが・・・。一方、このような方でも向上心のある方は、集団トレーニングによりいろいろな状況の中から気づきを得て、心の地図を修正出来るようになることもあります。

こういうパターンの方には、周りの方の対応が大切です。基本的なポイントは「一貫性を持つこと」。とにかく些細なことでも揚げ足を取って突っ込んでくるので、隙を作らないで、冷静かつ論理的に応対するのが大切です。ことにお子さんの場合であれば「両親連合」のようにしっかり足並みを揃え、ご両親お揃いで対人心理学を学んでいただくことを特にお勧めいたします。


4つの心の地図C あきらめ・絶望的な心の地図「自己否定・他者否定」
最近「ニート」や「引きこもり」が大きな社会問題になっています。「自分もNO(否定)、他人もNO(否定)」という心のパターンが、実は「現実的な人間関係そのものを受け入れない・構築できない」という要因になっているとも言われています。

そこまで深刻ではなくとも、この「あきらめ・絶望的な心の地図」を描いてしまった人というのは「人生や社会に希望や関心を失っている人たち」を指します。

たとえば仕事上で、本人が気付かなかった間違いを上司から指摘されたとします。このパターンの人は「混乱して何が何だか分からない状態・パニック」に陥り、そして「こんな間違いを犯すようではもうダメだ」「何もやる気がしない」「会社に行くのが嫌になってしまった」という悪循環を起こします。とても傷付きやすく敏感なのですが、周囲から客観的に眺めてみると、マイナスの側面には過敏で、プラスの側面には鈍感という二極化で「バランスが取れていない状態」であると言えるのです。

このような人に接すると、周囲はついつい「頑張れ!頑張れ!」とか「そんなことではダメじゃないか!」という叱t激励になりがちですが、実はそれは逆効果。かえって悪化を招きます。クルマにたとえると「バッテリーが放電してしまっている状態」ですから、まずは充電する必要すなわち休養が大切でもあります。あきらめや絶望の心の状態が高じると、中にはうつになってしまう方もいらっしゃいます。何よりも家族の理解が大切です。こういう方については、速やかに専門家にご相談なさって下さい。

以上4つの心の地図は固定したものではなく、状況によって往き来するものでもあります。また修正はいくらでも可能なのです。




ストレス指数
出来事 指数 出来事 指数
1 配偶者の死亡 83 21 配置転換 54
2 会社の倒産 74 22 同僚との人間関係 53
3 親族の死亡 73 23 法律的トラブル 52
4 離婚 72 24 300万円以下の借金 51
5 夫婦の別居 67 25 上司とのトラブル 51
6 会社を変わる 64 26 抜てきに伴う配置転換 51
7 自分の病気やけが 62 27 息子や娘が家を離れる 50
8 多忙による心身の過労 62 28 結婚 50
9 300万円以上の借金 61 29 性的問題・障害 49
10 仕事上のミス 61 30 夫婦げんか 48
11 転職 61 31 家族が増える 47
12 単身赴任 60 32 睡眠習慣の大きな変化 47
13 左遷(させん) 60 33 同僚とのトラブル 47
14 家族の健康や行動の大きな変化 59 34 引越し 47
15 会社の立て直し 59 35 住宅ローン 47
16 友人の死亡 59 36 子どもの受験勉強 46
17 会社が吸収合併される 59 37 妊娠 44
18 収入の減少 58 38 顧客との人間関係 44
19 人事異動 58 39 仕事のペースが落ちる 44
20 労働条件の大きな変化 55 40 定年退職 44

1年間に体験した生活上の変化の合計が150点以下なら、翌年に深刻な健康障害の起きる確率は30数%、150〜300点なら53%、300点以上なら80%以上である。
大阪府立公衆衛生研究所での調査結果(対象:1600人の会社員)
【ワシントン医科大学ホームズ博士らによるストレス調査を参考に作成】



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